南山新城(남산신성)~南山新城碑 来日記念
韓国の古代山城を研究する上で、最重要な城の一つ、慶州 南山新城の築城碑である南山新城碑第1碑が、現在、佐倉の歴史民俗博物館に展示中だ(12月14日まで)。
http://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/index.html
文字がつなぐ-古代の日本列島と朝鮮半島-
この石碑は、これまで一部破片だけのものも含めて10個が見付かっている。
石碑の冒頭は、どれも591年2月26日の築城年月日と、三年以内に担当工区の城壁が崩れたら罰を受けることを誓約する文章で始まり、責任者や担当者の出身地域、官職・実名、寸単位まで書かれた担当工事区間が刻まれている。6世紀末に既にこれだけ明文化された労役調達体制が整備されていたとは驚きである。
文体も他の6C新羅の大半の石碑同様、純漢文ではなく、新羅語の語順に合わせて書かれており、新羅人による新羅人の為の独自の新羅語表記の形が、ある程度できあがっていたことが覗われる。このように、石碑の方は新羅史の第一級資料である為、論文も多く、あちこちで取り上げられているが、南山新城自体がどういうものかについては、意外と情報が少なく探し難い。
外周4.9kmの石築の山城であるが、城壁の大部分は崩れて整備もされておらず、登山道を外れて多少のヤブコギをしないと、数箇所で残っている壁面を見ることはできない。筆者は在韓中の2008年に新羅文化院 http://www.silla.or.kr/ の踏査会に参加する機会を得てほぼ一周することができた。詳細は、以下に。
まず、場所であるが、慶州国立博物館で2011年に南山新城碑の特別展が開かれた際の解説図によると、以下の通り。
ちょっと分かり難いが、左が北になっている。左端に月城と、国立博物館があるが、そのすぐ南側に楕円形に南北に伸びる山が南山。南山新城は、その北斜面に蟹目嶺(250m)をピークとしていくつかの谷を取り込んで占地している。三国時代の山城の大半が外周数百m~1km程度であるのに比べて、王京を守る城らしく、4.9kmと極めて大型である。
この解説図で番号が1-10まで振ってあるのが、南山新城碑の出土地点。このうち、原位置と思われる場所で見付かったのは、真ん中辺りの第9碑だけである。このような石碑は、役目を終えると他の目的に転用されてしまうのが通例なので、恐らく当初は200個以上あった筈(注*)であるが、この程度しか残っていないと思われる。
注*: 工区まで確認できる石碑は4個、以下の通り区間は均等割りではない。第1碑:11歩3尺8寸、第2碑:7歩4尺、第3碑:21歩1寸、第9碑:6歩。三国史記によれば、この城の周長は2,850歩。上記4碑の平均を11.5歩として単純計算で周長を割ると、247。つまり、247の工区毎に、このような石碑が立っていたことになる。)
↓全体の図を以下に。この図は上が北。
↑上の方に赤丸で囲んだところが北門址。
北門址を過ぎ、登山路に沿って、真っ直ぐ進むと、南山新城の解説板が立ち、有名な長倉跡のところに出る。
上図の左端、西の真ん中辺りに赤点を付けたところが第9碑の出土地点↓
↑ほぼ垂直に積み上げている。三国時代新羅の古いタイプによく見られる。
↑東の谷を横断する。
↑3つ残る倉庫跡のうち、東北の隅にあるもの。
↑瓦は結構落ちている。
↑倉庫内に、除去仕切れなかった岩塊が残る。矢穴の跡が確認できる。
↑北城壁も壁面が少し残るが、上記の踏査会では割愛された為、別の機会に踏査した。
最後におまけで、第2碑以下、他の南山新城碑の写真もあげておきます。
↑第2碑
↑第3碑
↑唯一、原位置から見付かったと考えられる、第9碑。
2008年3月及び、2011年2月踏査。
参考文献:
「韓国の古代遺跡 新羅編(慶州)」 東潮、田中俊明 著 中央公論社
「新羅都城」 朴方龍 著 2013年刊 학연문화사
「The Beauty of Ancient Korean Calligraphy/Inside it is history」
Woljeon Museum of Art Icheon 2010年刊
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